こんにちは。
ローカルをオウエンする旅人 佐藤翔平(@tempurubato_yh)です。
2017年最後に読んだ、藤本智士さん著の『魔法をかける編集』がとても面白かった。
『魔法をかける編集』
めちゃ面白い本だ(´∀`)そして、この双方向でコミュニケーションしてるような文体が心地よくてやっぱり好きだ。吸い込まれるー📖
ローカルから全国へ発信する。 Re:Sと藤本智士さんのことhttps://t.co/KA4kfFpuWg#魔法をかける編集 pic.twitter.com/5UkEqq1qkC
— 佐藤翔平 / 移動する生き方 (@temporubato_yh) 2017年12月29日
📖 数時間で読み切った。
また読み返そう(´∀`)✨全部良かったけど、僕は特に3章と7章が胸アツだったな!!
Re:Sの話は共感しかないし、Webメディアの話は深く頷いた。
ローカルから全国へ発信する。 Re:Sと藤本智士さんのことhttps://t.co/KA4kfFpuWg
#魔法をかける編集pic.twitter.com/P7HvzL3koh— 佐藤翔平 / 移動する生き方 (@temporubato_yh) 2017年12月29日
著者の藤本智士さんのこと、編集長をされていた「のんびり」や「Re:S」のことなんかについては、少し前の記事で紹介させて頂きました。
今回は、本を読んだ感想や各章の紹介を手短に共有できればと思っています。
魔法をかける編集
この本は、全7章 237ページ から構成されています。目次を一見すると、まるで『ゲームの攻略本』のよう。
第1章 冒険の旅に出る
ローカルメディアを自分のものに!
第2章 勇者はこんなところにも
文章を使わない編集者
第3章 魔法の書をしたためる
紙の雑誌「Re:S」
第4章 仲間を手にいれる
秋田県で「のんびり」という挑戦
第5章 武器を八つ装備する
編集術を身につけろ!
第6章 いざ戦いのとき
編集を最大限に活かした「池田修三」
第7章 冒険はまだこの先に
これからのメディア
編集とは魔法であり、編集者とは魔法使いだと本気で思っているのです。 – P3参照
この本には、いったいどのようなことが書かれているのでしょうか。早速覚えたての僕の【魔法】を試してみようと思います。
第1章 冒険の旅に出る
第1章では、魔法とは何かということ、魔法に必要な「ビジョン」や「謙虚さ」について書かれています。
あなた自身がどんな服を着て、何を身につけ、どんなものを食べ、誰と付き合い、何を話し、どんな行動をとるか。その一挙手一投足が、あなた自身からの発信であり、それはもはやあなた自身がメディアなんだということです。 – P20参照
藤本さんがこの本で使っている『編集』や『ローカルメディア』という言葉は、特定の人に【だけ】当てはまる遠い世界の話ではなく、日常にある様々な場面に対していえることである…という共有から話は始まります。
SNSやBlog、ウェブや紙媒体のメディアを通じて発信している人もそうでない人も、自身の存在自体が他人に何かしら影響を与える可能性をもっており、それこそが発信であり『メディア』であるという解釈です。
マスメディアからローカルメディアに移りゆく時代に、個人がメディアになりうる時代に、何かを選択することや表現するということは、つまり『編集すること』です。
ローカルメディアとは伝説の剣なのだ!! と、ドラクエ風な比喩のなかで本文は緩やかに進んでいきます。
第2章 勇者はこんなところにも
第2章では、秋田の日本酒、青森のブックセンター、そして水筒の話が登場します。一見ばらばらな3つですが『魔法を使った編集の話』という共通点があります。
勇者には支える人が必要です。だからこそここで僕はみなさんに問いたい。「あなたは勇者ですか?」「あなた自身にビジョンはありますか?」
子どもの頃「あなたの夢はなんですか?」と問われるたびに、夢がなければいけないかのような強迫観念にかられたことを覚えていますが、ビジョンだってそう。なければそれでいいんです。
それよりも、もしあなたの近くに勇者がいるならば、あなたは編集の魔法使いとしてその役割をまっとうしてください。 – P44参照
この章で紹介されている「日本酒」「ブックセンター」「水筒」は、いずれも魔法使いと勇者がビジョンに向かっていくストーリー。魔法のチカラを感じることができる章です。
第3章 魔法の書をしたためる
第3章では、雑誌『Re:S』を通じて得られた知見について書かれています。風変わりな雑誌作りをするなかで目指した新しい”ふつう”、プロの素人として諸先輩方にもまれながらビジョンに向かい続けた日々のことなど。僕の好きな章です。
とにかくそんな未知の宝物に出会うための方法はただ一つ、旅に出ることでした。
その結果、これまで行ったこともなかった見知らぬ土地で、奇跡のような出会いを繰り返し、そのたびに心から感動し、多くの気づきを得た僕は、その一部始終を紙面に載せてお届けしました。
それがいわば「Re:S」という雑誌の柱でした。 – P75 参照
雑誌作りの基本でもある「台割」さえも作らず、旅での出逢いやそのストーリーに全てを委ねながら編集を進めていくその様は、今のWebメディアに少し重なりました。十年も前の話なのにとても新鮮です。
予定調和のない偶然の連続は、ドラマや映画よりも圧倒的なリアル。取材したエピソードを共有する編集者のワクワクやドキドキは、読者の心にもスッと入り込む魔法を与えていたのかもしれません。
第4章 仲間を手にいれる
第4章は、再び秋田がステージとなります。展示会のプロデュースや新しい紙メディア「のんびり」で関わった、ある意味日本の最先端を走っている秋田を通じて得た知見やエピソードが書かれています。
人口減少するからこそ、豊かになるイメージや、新しい価値観を、リーダーである市長が提示できなくて何が市長なんだろうと思います。
神戸の人口が増えました。でもその分、隣町の人口が減りました。みたいな想像力すらない人が市長って、情けすぎます。
こういう人たちに僕はいつも聞きたくなるのですが、「減る」ってことは、そこまで無条件にダメなことですか?
限られた資源、食糧、人口、労力、などなどを、どうシェアしながら幸福に暮らしていくか。 -P116 参照
神戸に育ち、神戸に事務所を構えながら、秋田県に出向いて仕事をしていると、様々な価値観の違いや視点の違いに気づかされるようです。
僕自身も横浜に生まれ育って、今地方を巡る旅をしていますが、『その感じ』はとても共感できるところ。人口減少による対策や地域活性に関してのアクションをベースに考えると、都市部はとても遅れています。
第5章 武器を八つ装備する
第5章では、編集術を公開します…と「のんびり」を作る過程で秋田メンバーに伝えていた編集術を明らかにしています。
①台割は適当。尺はフレキシブルに!
②まとめることの罠
③声を声のままに
④インタビューの基本は会話
⑤見晴らしのいい小見出しを
⑥テキトーが適当になるタイトル
⑦現場で100とってくる
この章だけで一つのコンテンツになりうるくらい、具体的かつ分かりやすく書かれている編集術。
前提として『のんびり』のような発信メディアを企てるなら…とはなりますが、長きにわたる活動で得たことを惜しげもなく共有している章です。(ライターさんやメディア関係者さんの必読章かも。)
一人の中に同居している反対と賛成を、強引にどちらかに導いてしまうことのほうがよっぽど不誠実だ P150-参照
僕はこの一文がとても刺さりました。
第6章 いざ戦いのとき
第6章は、秋田県民の日常にあまりに近すぎて評価されてこなかった木版画家 池田修三さんの話。半歩先を提示することの重要性について。
すると後藤さん、「たしかにそういうあたらしいものに出会った瞬間っていうのもインパクトあるけど、もっともインパクトがある瞬間っていうのは、そうじゃないねん。あんな、藤もっちゃん、もっともインパクトがある瞬間っていうのは、こんなものがあったらいいなって思っていたものが、目の前にあったときや」
その言葉自体が強烈なインパクトをもっていまも僕の真ん中に存在しています。 -P196 参照
『秋田のほとんどの家にある 木版画家 池田修三さんの作品。でも彼の名前を知っている人はほとんどいなかった』…こんなローカルすぎるエピソードから始まるこの章は、『再発見』『再編集』の面白さを物語っています。
消費者心理という言いかたをすると急にビジネスの話のようになってしまいますが、時代の半歩先を捉えること、あったらいいなを創造していくことなど、とても勉強になる章でした。
第7章 冒険はまだこの先に
最後の第7章は、いままでの知見を活かしてWebメディアでの展開を始める…という章です。Webを使うことに対する心構えや長期的なビジョンについての話が展開されます。
ウェブメディアにつきまとう「バズらせることの正義」の彼岸に行きたいと思っていた僕は、この言葉に、いや~救われました。
…
「のんびり」を終えてウェブメディアをやることになった僕が、そのときに考えていたことは、絶版になった途端に地底深くに貯蔵されてしまうような紙媒体とは違い、それが駄文であろうがなんだろうが、黒魔術のごとし「ググる」の呪文一発で蘇らせられるウェブコンテンツこそ、短絡的な動向に左右されるのではなく、未来に向けてどっしり腰据えて作らなきゃいけないのではないか? ということでした。 – P208参照
ブログをはじめた身だからか、この第7章もとても響くものばかりでした。『いまの時代に新たにメディアを立ち上げることとはどういうことか』…について、藤本さんの考え方が明確に現れている章だと思います。
「とりあえず短期的にPV数稼げればいいや」という狭い視野ではなく、「未来の僕たちへの贈り物」になるような素敵なメディアに育っていってくださいね。- P208 参照
また、発酵デザイナー 小倉ヒラクさんの文脈を引用したこの一文もとても刺さりました。発信をする際に『何のために』を明確にすることはとても重要なことと改めて感じました。
目の前の数字に振り回されちゃ魔法は使えない…ひとを感動させられる魔法の話の数々も共感の連続でした。
おわりに
この本を読み終えて、早速その編集という魔法を試してみました。如何でしたでしょうか。
当初【前編/後編】と分けようと思っていたものを一つの記事にまとめたので、少し長めにお付き合い頂いてしまいましたが…この本は本当におススメできるので、是非手に取ってみてください。
藤本智士さんの編集は、僕にとって白シャツのようなもの。肌馴染みがよく邪魔をせず、汎用性の高いアイテムです。
今このブログを読んでくださっている読者さんのスタイルに合うかどうかは分かりませんが、一度袖をとおしてみるとその心地よさを実感できるかもしれません。
以前の記事でも紹介した書籍『ほんとうのニッポンに出会う旅』もおススメです。
魔法使い一年生になりました。
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