こんにちは。
ローカルをオウエンする旅人 佐藤翔平(@tempurubato_yh)です。
このブログで よく読まれている記事の一つに、『総務省『関係人口』創出事業に 2.5 億円 ー平成30年度予算』があります。
この記事を書いたのは、ちょうどソトコトが『関係人口入門』という号を出したタイミングでした。
これから一気に【関係人口】という言葉の認知度が高まってくるだろう…という期待と共に、関係人口という概念やその面白さについて、自分なりに思考したものを発信したり本を読み漁っていた時期のことです。
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想像していたとおり、ソトコトが『関係人口入門』を出したのを皮切りに、日本各地で【関係人口】を取り扱うイベントや講演が爆発的に増えてきました。
それと同時に、この関係人口という言葉が安易に一人歩きしないよう、勉強会やディスカッションを通じて理解度を高めていこうという動きも増えました。
それだけ未完成で、一部の人のナニカに刺さる、しかし誤解も受けやすい、期待値や影響力のある言葉なのだと僕は感じています。
僕自身にとっても、今まで数年間ローカルを巡る旅をする中で感じていたことを、的確に言語化してくれた言葉の一つで、面白がれる言葉でした。
今回 高知市に、ソトコト編集長 指出一正さん、明治大学 小田切徳美さんと、関係人口という言葉を世の中に発信している代表的なお2人が来るという情報を知り、急遽トークイベントに参加させて頂きました。
久々に関係人口と対峙した時間。メモしたことの一部を共有できればと思います。
関係人口のつくり方 ~ぼくらは地方で幸せを見つける~
高知市内の老舗ホテルの大広間で行われた、集落活動センターが主催する【シンポジウム】の一コマでのトークイベントということで、参加者の年齢層が相対的に高く、「関係人口なんて分かるのか?」と感じたのが正直な感想でした。
実際どの程度響いていたかは分かりかねますが…指出さんのトークはとても爽快で、物語の読み聞かせを聴いているかのような心地よさがありました。
「全くの造語である【関係人口】というデタラメな言葉ですが、内閣府が掲げる 次の地方創生の最重要項目として、【関係人口】そして【関係案内所】という言葉があげられています。是非覚えて帰ってください。最先端、最高温度の言葉をこれから説明していきます。」
このような言葉と共にスタートしたトークイベント。40分あまりの短い登壇でしたが、その中で幾つかピックアップしたお話を共有したいと思います。
今回共有したい言葉
・ガリガリ君のサイズでものごとを見る
・弱さ、ほころび、破綻をみせられるか
・自分で発見したという喜び
・未完成であること
・お金を使って「関係」を買う時代
・関係人口はサポーターではない
ガリガリ君のサイズでものごとを見る
「皆さんを前に偉そうに喋っていますが、頭の中の7割はこの魚のことしか考えていません。…イワナです。」
一匹の魚の写真と共に、「ガリガリ君のサイズでものごとを見ています。」と話を始めた指出さん。どういうことでしょうか。
日本各地を周るなか、ある結論に達したそうです。
「47都道府県で本当に豊かな環境が残っているところは、イワナ(やアマゴ)、そしてタナゴがいるところだけ。」
「森の魚(川魚であるイワナ)がいる環境、そして町を経由して水が流れ着く田んぼにタナゴがいる環境。これが残っているところは、もう日本で4箇所くらい」なんだそうです。
森が守られ、町に流れる水がきれいな状態で保たれていると、流れ着く田んぼにもタナゴが生きられる環境ができる。…今ではほとんどの場所でこれが難しくなっているそうです。
「イワナやタナゴが入るポケット水槽のサイズこそが、ガリガリ君(小さな棒アイス)のサイズなのです。こういった視点を持てるか持てないかで、町の未来は変わってくると思います。こういった視点を、【地域の解像度を上げる】といいます。
地域のことを、やれ地方創生だ、高齢化だと、新聞やテレビを鵜呑みにして大きな視点でみがちですが、目の前にあること、足元にあるもの、マクロの視点でモノゴトを見ることからだと思います。」
非常に共感できる内容でした。
弱さ、ほころび、破綻をみせられるか
「関係人口を増やすためには、交流人口(観光のお客さん)を増やすような、町の魅力やキレイなものだけをアピールしても仕方がなくて、【弱さ・ほころび・破綻】の部分さえも隠さずにみせ、『関わりしろ』を見つけてもらうこと こそ が重要だと思っています。」
困っていること、助けてほしいこと、必要だと感じていることを、きちんと共有できるかどうか。
観光のお客さんと関係人口になってくれる人は明白に違う。そこを履き違えてしまうと疲弊してしまう。…そのようなお話にも共感しかありませんでした。
自分で発見したという喜び
「地域の魅力や面白さは、自分自身で発見していくことにこそ喜びがあるんです。
誰かに押し付けがましく魅力や特徴を紹介されるよりも、こんなものがあった、こんな場所があった、と各々で発見することにこそが価値がある。
それは、この時代によく言われている『再発見』という言葉ではなく、若者たちにとって『初めての発見』なんです。昔からあるよ、なんて大人たちが平然というのはNGワード。一緒に喜びを共有することこそが重要です。」
…このような言葉にも非常に共感しました。
僕自身の旅の最大の喜びも、自らが発見することでした。誰かに押し付けられた観光ルートではなく、自身で面白さや楽しみかたを見つけていくこと。まさに!!です。
未完成であること
完成された場所で、完璧なおもてなしを受けたいわけではない。
関係人口になりたい人たちは、完全なサービスを望んでいるわけではない。
ハレよりケ。
日常を一緒に共有することにこそ喜びを感じるし、未完成な部分を一緒に作っていくことにこそ関わりがいを感じるし、全てをサービスとして供する必要はない。
地方で訪れた人気のゲストハウス体験。
完成された料理が提供されるのではなく、ゲストもホストも、みんなで野菜を切るところから始め、皿を並べ、肉を焼き、みんなでBBQをするように時間を共有する。
みんなで時間空間を共に作り上げていくことこそが、今若い人たちが求めている関わりなのだと実感する。
このようなエピソードにも、非常に共感する部分がありました。
お金を使って「関係」を買う時代
「クラウドファンディングが多く利用されている背景にも感じることですが、今の若い人たちのお金の使い方が変わってきています。」
モノを買う時代から、コトや体験を買う時代、そして『関係』を買う時代へ。
応援したいプロジェクトにお金を出して、そこで活動している人たちと関係を築きたい。そこに対してお金を払っている。
いま、若者は関係を求めています。
町全体で「関わりしろ」を共有し、その「関わりしろ」をヨソモノと共有できる「関係案内所」を町で機能させ、「関係人口」を歓迎できる土壌があれば、自ずと関係人口は増えていくと思います。
言葉少なでは誤解を与えかねない要素もありますが、自分自身がヨソモノとして町と関わる日々の中で、とても共感する言葉でもありました。
おわりに
関係人口はサポーターではない
登壇の最後に、指出さんは「関係人口として関わろうとしている人たちは、サポーターでは決してありません。プレイヤーなのです。」 という言葉を仰られていました。
『その土地に住んでるわけでもないのに、プレイヤーとはどういうことだ?』
そのように考える人も少なくないと思いますが、関係人口には様々な関わりのグラデーションがあり、住んでいない人も様々な距離感で地域と関われる…という概念の言葉でもあります。
ここら辺の考え方については、田中輝美さんの著書『関係人口をつくる』で分かり易く触れているので、是非気になる方は一度読んで頂ければと思います。
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指出さんのトークの後は、小田切教授による関係人口についての補足説明、そして高知で活動をする方々を交えてのパネルディスカッションとイベントは続きましたが、今回はこの辺で。
※今回使用した画像は、イベント中に配布された指出さんのスライド資料を引用しています。
なお、「」を入れた言葉も含めて、指出さんの言葉をそのまま100%忠実に引用したものではありません。メモしたものをベースに、自分の解釈を入れながら記事を書いております。予めご了承ください。
おススメ書籍
最後に、関係人口に関するおススメの書籍をご紹介して終わりたいと思います。
レビューに関しては、書籍紹介の記事『旅と関係人口:関係人口を学ぶ3冊の書籍紹介。』を是非参考にしてみてください。
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関係人口とは
関係人口とは、言葉のとおり「地域に関わってくれる人口」のこと。自分でお気に入りの地域に週末ごとに通ってくれたり、頻繁に通わなくても何らかの形でその地域を応援してくれるような人たち。
『関係人口』に関する記事を、専用ページにて蓄積することを始めました。
平成30年度、総務省では「関係人口創出事業」に対し2.5億円の予算を既に計上しており、今後一層注目される言葉になっていくと予想しています。
▼ブログ内の『関係人口』記事はこちらに
https://satoshohei.com/kankeijinkou-matome/
ブログタイトルにある『微住』とは、「移住・定住」と「旅での滞在」の間にあるような、「旅するように暮らす」「暮らすように旅する」をバッグ一つで実現する、前向きな仮暮らし的生活スタイルであり、地域と繋がるソーシャルアクションのことです。
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