こんにちは。
ローカルをオウエンする旅人 佐藤翔平(@tempurubato_yh)です。
先日、久しぶりに 映画『イントゥ・ザ・ワイルド』を観ました。
この映画は、旅人ならずともファンの多い名作の一つかもしれません。少なからず、僕の周りではそんな印象を感じる作品です。
何しろ印象的なセリフの多い映画なので、そのいくつかを今回ピックアップしてみることにしました。
映画『イントゥ・ザ・ワイルド』
映画のあらすじ
まずはじめに、今回の映画『イントゥ・ザ・ワイルド』について簡単に共有させて下さい。
そして僕は歩いていく
まだ見ぬ自分を出会うために
1990年の夏、ジョージア州アトランタのエモリー大学を優秀な成績で卒業したクリストファー・マッカンドレスは、将来の成功を約束された22歳の若者だ。
ワシントンDC郊外の高級住宅街で育った彼は、NASAの航空宇宙エンジニアだった父ウォルトと母ビリーから卒業祝いとして新車を買ってやると言われるが、「新しい車なんか欲しくない。何も欲しくない」と素っ気なく答える。
そしてまもなく2万4000ドルの貯金を慈善団体に寄付し、両親や妹カリーンに何も告げることなく、中古のダットサンに乗って姿をくらました。これがクリスの壮大なる旅の始まりだった。 – youtube
読書好きの秀才、いわゆるエリートである主人公が、現代への違和感や両親に対する反発心を期に旅に出る…自分が信じているもの、または真実や真理を探す旅へ…
重なる旅と共感
平々凡々の学歴と人生を過ごしてきた僕とは、ある種違う類の旅人かもしれませんが、僕も旅に出る前の1年間半ほどは読書に明け暮れ、300冊近いインプットを経て旅に出ることをしました。
情報をインプットするなかで、自分の思想や趣向を理解・整理したり、言語化していくことは徐々にできてくる。しかしそれだけでは、それは『情報』のままでしかなくて…それを実体験と共に、血肉に変えていくようなアクションとして旅を選択した主人公に、僕自身とても共感する部分がありました。
そして、両親に対しての想いや、現代に対しての想いも共感のあるところ。違う環境で違う角度から向き合うことで、なにか近づける(または離れる)きっかけになるかもしれない…そんな想いがあったのだと思います。(余談を失礼しました。)
印象的なセリフ
一度本編を最後まで観終えたとき、その途中で幾つものセリフを「通過した」感覚に気付きました。
旅に例えるなら、気になるお店やスポット、案内看板や小さな路地に心を奪われながらも、立ち止まらず通り過ぎてきた感覚。
再びまた本編を再生させ、その通過したセリフを辿る旅に出ました。
我 人間より自然を愛す – バイロン卿
冒頭直ぐに出てくる言葉。
画面いっぱいに並べられたこれらは、これから主人公が体験する『大自然との共生』を、予感させている言葉のようだった。
道なき森に楽しみあり
孤独な岸に歓喜あり
誰も邪魔せぬ世界は深い海とーー
波の音のそばに
我 人間より自然を愛すーーバイロン卿
たった一人で大地を歩く 荒野に姿を消すため
これは、バスの木材に字を掘り込むシーン。
劇中では、時系列が度々反復します。旅に出る前のシーンかと思えば、最期に辿りつくバスのシーンになる。そうかと思えば、自分のいない現在が現れたりする。
映画を観ていない人には共感が難しいセリフだと思いますが、彼の旅の目的や思想が反映されている重要なシーン。
2年間 大地を歩いている
電話も プールも ペットも タバコもない
究極の自由 極限の生き方 美を追求する旅人
その住みかはーこの地上だ
そして今ー
2年の放浪の後 最後で最大の冒険が待つ
偽りの自分を抹殺すべくー
最後の戦いに勝利して 精神の革命を成し遂げるのだ
これ以上 文明に 毒されないよう逃れてきた
たった一人で大地を歩く 荒野に姿を消すため
ーアレグザンダー・スーパートランプ 1992年5月
名声よりも 公平さよりも 真理を与えてくれ – ソロー
これは、焚き火で『公平』について語るシーン。
とあるヒッピーのカップルと時間を共にすることになり、主人公のこれまでの生活がやんわりと話題になる。
旅をしているとよく聞かれる『家族は?』『家族はなんて言ってるの?』ということ。
両親に対する反発心を向けた主人公に、『親の話だけ邪険に扱うなんて公平じゃない』…という趣旨の言葉を投げかけた。
そこで主人公が言い返した引用句になります。
「公平さよりも真理を求めているんだ」…少し傲慢ではあるが、彼の心中や目的に対する想いの強さが伺えるシーンです。
愛よりも 金銭よりも 信心よりも
名声よりも 公平さよりも
真理を与えてくれ ーソロー
実際の強さより 強いと感じる心だ
海が苦手だった主人公が、とある目的で海に向かうシーン。
文明から距離を置く生活のなかで、自分にとって必要なものを少しずつ見極めていこうとする主人公の意図を感じるセリフ。
「自分の頭と手しか頼れない」…究極に手放していくと、最後に残るものは自分自身。自分自身で生きていけるか…ということを問う言葉にも受け取れる。
人生において必要なのはー
実際の強さより
強いと感じる心だ
一度は自分を試すこと
一度は太古の人間のような環境に身を置くこと
自分の頭と手しか頼れないー
苛酷な状態に一人で立ち向かうこと
他に何を望めよう。 家族の幸福 – トルストイ
旅の経験を積みながらも、読書を通じて、心の友と意思疎通を図る主人公。
「幸福とは何か」「家族とは何か」。今までの実生活で実感出来なかったそれらを、旅という今までと違う環境の中で知覚していく…彼のなかで答えを探し続けていた、大きなテーマの一つであったのだと推測します。
私は長いこと生きてきた。
幸福のために何が必要か分かった。
田舎での静かな隠遁生活だ。
人々の役に立つこと
人によくするのは簡単だ。
皆 親切に慣れていない。
人の役に立てる仕事をすること。
それから自然 書物 音楽 隣人への愛。
それが私の幸福の概念だ。
そして 最も必要なのは きっと人生の伴侶とー子どもへの愛だ。
他に何を望めよう。
「家庭の幸福」トルストイ
人生の楽しみは 人間関係だけじゃない
旅の途中で出会った老人に対して向けているセリフだが、もしかしたら自分自身に投げかけている言葉でもあったのかもしれない。「人生の楽しみは人間関係だけじゃない … 物の見方を変えなくては」。
そして、それを知ってかしらずか、老人も言葉を返す…「許せるときが来たら 愛せる」。ここでも、彼の心中にあるだろう『家族』のことが描かれています。
人生の楽しみは人間関係だけじゃない。
神はあらゆる所に新たな楽しみを用意してる。
物の見方を変えなくては。 – スーパートランプ
許せるときが来たらー愛せる
愛せた時にー神の光が君を照らす – 老人
物事を正しい名前で呼ぶこと – ドクトル・ジバゴ
自分自身を捨て、偽りの名前『アレグザンダー・スーパートランプ』を名乗って旅を続けてきた主人公。
ここへ来て「物事を正しい名前で呼ぶこと」という一節に目が留まる。見渡す範囲にある草木一つ一つにも名前があり、それは自分自身にもいえることだった。
彼女は 人生の目的に 改めて気づいた
魅力的な自然の意味を理解し
物事を正しい名前で呼ぶこと
ードクトル・ジバゴ
幸福が現実となるのは それを誰かと分かち合ったときだ。
魂を振り絞って、最期の最期に出てきた一節。
最期の最期、思い浮かべたのは、何を隠そう『家族の存在』だった。自分が望む方法で、自分が目指す生きかたを実践した数年間。彼は本当に心から幸せだったのだろうか。
幸福が現実となるのは、それを誰かと分ちあったときだ。HAPPINESS ONLY REAL WHEN SHARED..
おわりに
主人公が欲しかったもの…
彼が最も欲しかったもの。
それは『実感』と『両親への愛』だったんじゃないかなと、僕は思いました。
<実感>
・ひとりで生きていける実感
・自然のなかで生かされている実感
・自分の信じる道で生きる実感
・小説から引用する言葉の実感
冒頭に話をした『情報を血肉に変えていく』ということや、手放す生活の中で、どれだけ生きていけるかといったある種の『サバイバル力』を試すような感覚、知識と想いを具現化する『社会実験』のような感覚もあったのではないだろうか。
そしてシンプルに、『自然によって生かされている実感』を取り戻したかったのだと思いました。
<両親への愛>
両親からの愛を、そのままシンプルに受け取ることが出来なかった。それは、少し複雑な家族関係や、今までのシコリや負の感情の積み重ね、そして価値観の違いなどがそうさせていたのだと思います。
そして同時に、彼自身もまた『両親への愛』をシンプルに表現できなかった。許せない。理解したくない。受け入れられない。分からない。…そのような感情と闘いながらも、それに打ち勝つことが出来なかった。
これらと向き合うための旅でもあったのだと思う。決して、逃げていたのではなく、諦めていたのでもなく、挑んでいたのだと僕は感じました。
舞台が西洋なので、表現方法や根底に流れているものの違いは感じましたが、自身の旅ともついつい重ね合わせてしまうものでした。
ある人が観たら、それは「中二病」かもしれないし、「痛いやつ」かもしれないし、「頭でっかちなたわごと」かもしれないけど…それでも非常に共感してしまう作品でした。
日本版では方丈記なんかが、この作品に近いのかな。
(時代背景も描写も全然違うけど…。)
関連本
最後に、関連本の紹介をして終わりたいと思います。
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